研究概要 |
面の規制されたTiO_2半導体電極を用い,フェムト秒四光波混合による光ダイナミクスの解析を行った.その結果,バンドギャップ(Eg)以上の励起光を用いた場合,電子・正孔再結合による緩和過程が観測され,時間の早い数psの領域では電位依存性がほとんど見られなかったが,非常に遅い数100psの領域においてはフラットバンドより正の電位で減衰が早くなり,発光の電位依存性との対応が見られた.一方,Egいかの励起光の場合,主に電子分極のみによる光カーダイナミクスが観測されたが,水素還元した単結晶電極では,電子分極より少し遅い100fs程度の非常に早い緩和成分の他に,1.26GGHzの超音波の伝搬が観測された.これは水素還元した単結晶電極において多くの表面準位が存在し,この励起によって非常に早い100fs程度のphonon放出が起こり,これに伴う熱放出によって周期的な密度変化が誘起されるものと推定した. さらに,電極界面における色素増感電子移動反応を解析するために,カルボン酸が2個,4個,および6個ついた3種類のRu-bipyridine錯体を合成した.これらの錯体,ローダミン系色素,シアニン色素をTiO_2ナノ微粒子および単結晶表面に化学修飾し、その電子移動ダイナミクスをピコ秒時間分解蛍光分光,フェムト秒分光で解析した.単結晶電極では,定常光蛍光スペクトルでは僅かな電依存性が見られるのみであったが,蛍光減衰曲線においてはすべての電位領域でパルスと同程度の極めて早い寿命成分が観測され,ピコ秒オーダーの電子移動反応が起こっていることを示唆した.ナノ微粒子の溶液中における電子移動をフェムト秒過渡吸収分光で解析したところ,200〜300fsの電子移動反応と,電子移動より少し遅い2成分以上の寿命を持つ逆電子移動反応が観測された.今後,検出系の感度およびS/Nをあげ,単結晶電極における電子移動のダイナミクスの実時間測定とそのフェルミ準位依存性を解明したい.
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