研究概要 |
本研究では,ナノメートル領域の均一な細孔を持つメソ多孔体シリカにモリブデン酸化物を担持した触媒が,オレフィン・メタセシス反応に高い活性を示すことを見出した.細孔径や細孔長の異なるメソ多孔体シリカ(HMS(n):nはゾルーゲル反応で鋳型剤として用いた第一級アルキルアミンの炭素数を示す)を調製した.HMS(n)に一定量の(NH_4)_6Mo_7O_<24>を担持した後,空気中で熱分解するとHMS(n)の細孔面にMoO_3が分散された触媒MoO_3/HMS(n)が得られた.このMo触媒を1-オクテンのn-ヘプタン溶液に加え,50℃で加熱攪拌して,メタセシス生成物の一つの7-テトラデセンの生成量を定量した.HMS(8)(細孔径1.9nm,粒子径50nm以下)はHMS(12)(細孔径2.4nm,粒子径200〜700nm)やHMS(16)(細孔径2.9nm,粒子径200〜700nm)に比べて細孔径が小さいばかりでなく,粒子径も小さいことがSEM観察からわかった.HMS(8)の粒子径が小さいことから,細孔長もHMS(12)やHMS(16)に比べて短くなっていると推定される.1-オクテンのメタセシス反応において,MoO_3を担持したMoO_3/HMS(8)は,HMS(12)やHMS(16)に担持した触媒よりも高い活性を示した.一方,市販の非晶質シリカ(細孔径3nm)にMoO_3を同量担持したMoO_33/Si0_2は,同一反応条件下では殆ど触媒作用を示さなかった.このことより,メソ多孔体シリカの特異的な表面構造がメタセシス触媒活性種の安定化に大きく寄与していると推定される.
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