研究概要 |
交付申請書に記した計画に従って、まず、いくつかのパラジウム錯体触媒を系中で調製し、塩基存在下、芳香族ハロゲン化物とフェノール類とのカップリング反応を検討した。その結果、塩基および反応溶媒を適切に選択することにより、フェノールおよびそのパラあるいはメタ置換体が芳香族C-H結合の切断を伴って、臭化アリールと効率よく反応することがわかった。また、過剰の臭化アリールを用いた場合、最大五つの芳香環が連続的に導入され、2-(ビフェニル-2-イル)-6-(1,1':3',1"-テルフェニル-2'-イル)フェノール誘導体が生成することを見いだした。この生成物は、かさ高い酸素配位子や安定ラジカルの前駆体として有用である。なお、4-tert-ブチルフェノールのブロモベンゼンによるペンタフェニル化合物について、X線結晶構造解析で各種スペクトルによる推定構造が正しいことを確認した。ついで、フェノール類にかわる基質として、いくつかの芳香族ケトンを用い、芳香族ハロゲン化物との反応を行ったところ、ベンジルフェニルケトンやアセトフェノンが臭化アリール存在下で、カルボニル基のα位とオルト位の両者にアリール化を受けることがわかった。さらに、臭化アリールとして、1,2-ジブロモベンゼンや2-ブロモベンズアルデヒド用いて芳香族ケトンとの反応を行うと、ベンゾフラン、インダノンおよびナフトール誘導体を合成できることがわかった。これらの反応は、その簡便さから、オリゴフェニル化合物や多環化合物の合成法して有用である。コントロール実験から、いずれの反応も、鍵中間体であるアリールパラジウム種が関与し、フェノール類または芳香族ケトンから生成するアニオン性酸素のこの中間体への配位を経て進行するものと推定された。
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