研究概要 |
一酸化炭素をベースにする有機合成反応は学術的にも実用的にも極めて重要な反応である。私達は、以前、ロジウム触媒を用いて水性ガスシフト反応条件(CO+水)下で加熱反応させるとアルキンが環化カルボニル化されてフラン-1(3H)-オンを与えることを見出している。本反応は水性ガスシフト反応条件で進行することから、有機溶媒を使用せず水中で反応を行ったところ意外にもカルボニル化が円滑に進行し、フラノンが生成することを偶然に見出した。本研究では、有用物質であるフラノンの経済性にも優れ且つ環境低負荷型であるアルキンの水中カルボニル化反応による合成法の一般化を目的にした。本年度は下記の研究成果を得た。 1.塩基の添加効果:有機溶媒中でのアルキンのカルボニル化では塩基を添加すると反応が円滑に進行する。水溶媒中での塩基の添加効果を検討した結果、3級アミンが最適であり、基質と同量程度添加すると反応を著しく促進する効果を示した。 2.一酸化炭素の圧力効果:1-100気圧の圧力範囲で検討した結果、40気圧までは一酸化炭素の圧力に比例して転化率およびフラノンの収率は向上した。50-100気圧の圧力範囲では転化率、フラノンの収率共に一定値を示した。 3.反応温度:40℃から10℃毎に昇温し検討した。40℃では反応は殆ど進行しなかったが、60℃では18時間後の転化率が80%,80℃では96%であった。 4.触媒:Fe_3(CO)_<12>,Ru_3(CO)_<12>などの8族金属や、Ir_4(CO)_<12>,Co_2(CO)_8など9族金属カルボニル錯体は殆ど触媒活性を示さなかった。[Rh(CO)_2Cl]_2,[Rh(cod)Cl]_2,Rh_4(CO)_<12>などのロジウムカルボニル錯体はRh_6(CO)_<16>と同程度の活性を示したが、Rh(H)(CO)(PPh_3)_3,(π-C_5Me_5)Rh(cod)は殆ど不活性であった。従って、本反応にはロジウムカルボニル錯体のみが活性であることが分かった。
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