| 研究概要 |
光学活性化合物の高効率合成法の確立は有機合成化学上重要な研究課題である.特に,触媒的不斉合成反応は潜在的効率性の高さから最もその開発が望まれている.ワッカ―反応は高原子価パラジウムにより触媒される汎用性に富む変換工程として知られているが,その効率よい不斉化の例は全くなかった.本研究ではその不斉化に挑戦し,ワッカー型触媒的有機変換工程全般に適用可能な原理,概念の確立を目指した.
これまでに,軸不斉ビナフチル骨格の2位にホスフィン,2'位にオキサゾリン環を導入した独自の新規光学活性ビスオキサゾリルビアリール配位子(boxax)を設計・開発し,Pd-boxax錯体触媒を調製・利用することで,初めて高度なワッカ―反応の不斉化に成功した.また触媒活性種の立体構造をX線結晶構造解析により明らかとし,さらに錯体上の電子的性質を精査,最適化することで高い触媒活性と高立体選択性をあわせ持つ触媒の開発に成功した.
特にboxaxの基本骨格である軸不斉ビナフチルの3位,3'位はアルキルリチウムとの反応において近傍位オキサゾリン基により誘起されるリチオ化を受け,引き続き種々求電子試薬と扱うことで容易に多様な誘導化が可能である.これによりさらなる構造-機能最適化が実現されている.
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