研究概要 |
本研究では、多重結合としてカルボニル基,オキシムエーテルやヒドラゾンなどの複数のヘテロ原子含有官能基を有する基質へのラジカル付加反応を検討した. 1.分子内閉環反応とその応用 多重結合へのラジカル付加閉環反応は,入手しやすい原料からワンポットで三つの結合形成と官能基化された環状化合物の合成ができることから有機合成上極めて有用である.本研究ではカルボニル基とそのヘテロ原子含有誘導体のオキシムエーテルやヒドラゾンを同一分子内に含む基質へのヘテロ原子ラジカル付加閉環反応を検討した結果,閉環反応は速やかに進行し,いずれもtrans体を主生成物として与えること,ラジカル受容体オキシムエーテルの幾何異性は閉環反応の立体化学に大きな影響を与えないこと,ケトン体の場合は反応が遅いこと,ケトンとケトオキシムエーテルから4級炭素を生成する場合は高選択的にtrans体を生成すること,6及び7員環形成も可能であることなどが明らかとなった.また,本ラジカル付加閉環反応を応用したaminocyclitols類や(-)-balanolの全合成も達成した. 2.分子間反応とその応用 オキシムエーテルなどの複数へテロ原子含有官能基の分子間ラジカル付加反応が,BF_3-OEt_2存在下で効率良く進行することを初めて見出し,さらにα-アミノ酸やアミノ酸のワンポット合成法も確立した. 3.固相ラジカル反応への展開 固相上で炭素炭素結合を形成できる緩和な反応としてEt_3Bをラジカル開始剤とする分子間及び分子内反応を開発し,さらにα-アミノ酸の固相ラジカル合成に成功した.
|