研究概要 |
二酸化炭素還元はエネルギー的に不利であるが、1段階の還元反応で高付加価値の化合物合成が可能となればCO2をC1源として活用することが期待される。金属錯体を触媒とするCO2還元の最大の問題点はCO_2からCOへの変換ではなく、CO_2由来の金属-CO結合が還元的に切断されCO発生が起こるため、CO_2の多電子還元のみならず炭素ム炭素結合生成を伴う還元反応が進行しないことである。本研究ではCO2還元の活性が高いRu錯体に2,2'-ジピリジルと単座の1,8-ナフチルを導入した[Ru(bpy)(napy)_2(CO)_2]^<2+>を触媒するCO_2還元反応を行った。Ruに結合した1,8-ナフチルは還元されやすく、フリーのナフチル窒素の塩基性が増大してRu-COの炭素へ分子内求核攻撃を起こして、Ru-炭素間にnapy基が架橋したRuCNCNを含む5員環が形成される。さらに、2電子目もナフチル配位子のπ^★軌道間に収容されるため、実質的にはRu金属を経由されることなくナフチル基からカルボニル基への2電子供与が可能となり、Ru-CO結合は極めて還元的活性化を受ける。その結果、CO_2気流下のDMSO中で[Ru(bpy)(napy)_2(CO)_2]^<2+>を触媒、(CH3)4NBF4を電解質としてグラシーカーボン電極を用いて、-1.4〜-1.5V(SCE)で定電位電解を行うとCO発生アセトンと炭酸イオンが電流効率80%以上で生成した(式1)。 2CO2+2(CH_3)_4N+4e^-→CH_3C(O)CH_<3]>+CO_3^<2->+2(CH_3)_<3]>N (1) 立体的に大きな(C_4H_9)_4NBF_4はCO_2還元のアルキル化試薬としては不活性であることを利用すると、多様な基質のカルボニル化が可能で、C_6H_5lを存在下、(C_4H_9)_4NBF4を電解質として同様な条件下でCO_2還元を行うと選択的にC_6H_5C(O)C(O)C_<6]>H_5のみが生成した (2式)。 4CO_2+2C_6H_5l+6e^-→C_6H_5C(O)C(O)C_6H_5+2CO_3^<2->+2l^- (2) 1,2式の反応は[Ru(bpy)(napy)_2(CO)_2]^<2+>のカルボニル基が一つあるいは二つともアシル化され、反応が進行したと考えられる。
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