研究概要 |
本研究では,高周期ヘテロ元素が関与するインターエレメント結合及びインターエレメント相互作用の性質を定量的に明らかとすることを目的に,セレンをプローブとする微弱相互作用系の実験研究をベースに,データベース解析と高精度分子軌道計算を併用して,ヘテロ元素化学の諸問題に対して定量的解析を行った。1.Se…F相互作用についてはこれまで数例の報告例があったが,この微弱な相互作用が真に引力的であるかどうかは不明であった。本研究ではSe…F相互作用の強さを溶液中で直接定量化することによって,この相互作用がわずかながら引力的であることを初めて明らかとした。2.Se…O相互作用はある種の化合物の生理活性との関連が指摘されており,大変興味深い。これまでSe…O相互作用エネルギーの定量化は行われていなかったが,本研究ではO-17及びSe-77NMRの測定と分子軌道計算を組み合わせることによって,これを達成した。3.X-Se-X系(X=Br,Cl)の超原子価結合はこれまで多数報告されているが,この結合の化学的な意味づけは十分には行われていなかった。本研究では,データーベース解析から2つのSe-X間の原子間距離が結晶中においてお互いに反比例の関係になることを示し,セレン上の求電子反応の反応座標との関連を明らかとした。更に,X-Se-X超原子価結合が結晶中では真空中に比べて約0.lA収縮していることから,結晶中におけるパッキング相互作用のエネルギーを定量的に推定することができた。4.π面選択性に及ぼすヘテロ官能基の置換基効果を,実験による選択性の決定と分子表面に浸み出した電子密度の計算から明らかとした。
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