研究概要 |
昨年より継続して研究を行っているトンネル構造をもつCr-B-Si-Se系新化合物については,X線回析データ等より組成の推定を行い,Cr(B_<12>)Si_3Se_<12>・(B_2Se_3)_<1.33>であると結論された.また,新たな合成法により,不純物を含む試料であるが従来より100倍以上の収量を得ることに成功した.また,この合成法用いることにより,遷移金属としてクロム以外に,チタン,バナジウム,マンガン,鉄においても同様の化合物が得られることが粉末X線回折法により確認され,M(B_<12>)Si_3Se_<12>と言う構造が安定な構造であることが判明した.これによって,トンネル構造をもっセレン化物という新たな化合物群の存在が明らかとなり,今後,硫化物への展開が期待される. 金属塩化物とリン酸水溶液を反応させ,得られたアモルファスな金属リン酸塩を石英封管中で温度勾配のある条件で加熱することによって,ケイ酸イオンとリン酸イオンの複合ネットワーク構造を持つ二つの化合物,Rh(SiOSi)(PO_4)_3およびIn_2(SiOSi)_<1/2>(PO_4)_3が得られた.これら二つの化合物は異なった組成をもつが,構造的にはきわめてよく似ている.すなわち,いずれの構造も,リン酸イオンはほぼ六方最密充填しており,その正八面体型の間隙に金属イオンおよびSiOSi単位が入っている.これらの構造で特に注目されるのは,Si-O-Siの結合角がほぼ180°になっていることである.ほとんどの縮合ケイ酸塩において,Si-O-Siの結合は曲がっており,これが曲がっているのは,SiOSiがリン酸イオンと結合していることによる電子的影響と考えられる.
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