研究概要 |
1、チアザインS≡N結合の性質解明:チアザイン類のS≡N結合の性質を理解するために、本研究で合成した計6種のチアザイン類(Ph_2RSN:R=F-,nPrO-,O(CH_2)_4N-,Ph_2SN-,Ph-,biphenyl)のX線構造解析に成功した。これらの結果、チアジル基のS-N結合距離は、1.444-1.472Åであり、S-N二重結合の計算値1.56Åよりも短く、三重結合性であることが分かった。更にモデル化合物(Me_3SN)を用い、ab initio計算を行った結果、S-N結合は、かなり分極しており、また、π_N→δ^*_<S-C>の相互作用がS-N結合長や硫黄中心の立体に大きく関与していることが明らかとなった。この計算結果は、トリフェニルチアザインを用いた、N-アルキル化反応にもよく一致しており、同等のpKa値を持つアミン類よりも反応速度が速いことが分かった。 2、フルオロチアザインやアミノチアザインの熱分解や加水分解の機構:フルオロチアザインの加水分解機構を紫外可視分光光度計を用いた速度論的研究を行った結果、その反応機構は、溶液のpHに依存することが分かった。またアミノチアザインの熱分解機構は、三配位化合物のスルフィルイミンの熱分解と同様な機構で進行することが分かった。 3、チアジルカチオンの発生を試みるAgClO_4存在下、N-ブロモスルフィルイミンとアミン、アルコール類との反応を試みた結果、対応するチアザインの合成に成功した。この反応は、AgClO_4が存在しない場合、対応する化合物が得られないことから、反応系内にチアジルカチオンが存在していることが示唆できた。 4、ジフェニル-メチル-チアザインと酸化剤との反応を試みた結果、N-メチルスルホキシイミンがほぼ定量的に得られたことから、この反応機構は、Baeyer-Villigerタイプの反応機構で進行することが分かった。
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