研究概要 |
以下のカルコゲノカルボン酸誘導体について、系統的に合成と構造を検討し、次の成果を得た。 1.ジチオカルボン酸14族エステルの合成と構造 一連のジチオカルボン酸14族エステル(RCSSMR'_3,M=C,Si,Ge,S,Pb)を60-90%の収率で合成・単離できた。熱および酸素に対し比較的安定な結晶または油状物質である。X線構造解析からチオカルボニル硫黄と中心14族金属間の距離から、硫黄の14元素への親和性(Sn>Pb>Ge>Si>C)を明らかにできた。 2.チオおよびカルボン酸カリウム、ルビジウム、セシウム塩 芳香族チオカルボン酸のカリウム、ルビジウム、セシウム塩は2つの金属カチオンを共有した二量体構造であり、チオカルボキシル基のC-OおよびC-S距離はそれぞれ二重結合と単結合を示し、陰電荷が硫黄上に局在化した構造をとっていると見られる。対応するジチオカルボン酸カリウム、ルビジウムおよびセシウム塩は2つの金属カチオンを共有した二量体である。ナトリウムとカリウム塩はジチオカルボキシル基の二つのC-S結合距離が異なり単結合と二重結合距離を示し、陰電荷は単結合で結ばれた硫黄上に片寄っていると見られる。一方、ルビジウムとセシウム塩のそれらはほぼ等距離で、単結合と二重結合の中間の値を示し、陰電荷はジチオカルボキシル基上に非局在化していると見られた。チオカルボン酸砒素エステルと二級アミンとの反応から対応するアンモニウムジアリールアルシンチオラートが高収率で合成できることを見いだした。X線構造解析からNH…S間で水素結合を作ることが見いだされた。
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