研究概要 |
10族遷移金属錯体触媒により,1,3-ジエン及び1,2-ジエン等の有機不飽和化合物への(ジメチルフェニルシリル)ピナコールボランの付加反応が収率良く進行することを見出した。シリルボランと非環式1,3-ジエンの反応にはニッケルアセチルアセトナート錯体とジイソブチルアルミニウムヒドリドから調製した触媒が最も高い触媒活性を示し,1,4-付加生成物であるcis-1-シリル-4-ボリル-2-アルケン類が高選択的かつ高収率で得られた。また,環状ジエンのシリルホウ素化は前記触媒系にホスフィン配位子を添加した場合にのみ高収率で進行した。特に,シクロヘキシルジフェニルホスフィンを用いると高い立体選択性でcis体の生成物を与えた。シリルボランと1,2-ジエン(アレン類)の反応はパラジウム触媒の存在下収率良く進行し,ボリル基がアレンの中心sp炭素に結合したβ-ボリルアリルシラン型の生成物が位置選択的に得られた。末端アレンを用いた反応はシリルボランが内部二重結合に付加した生成物を選択的に与えることを見出した。これらの新しいシリルホウ素化反応は有機化学における重要な官能基であるシリル基とボリル基を有機分子に一挙に導入できる効率的な方法である。アレンのシリルホウ素化によって合成されるβ-ボリルアリルシランのホウ素部位をパラジウム触媒によるヨウ化アリールとの反応によって選択的にアリール基へと変換し,β-アリールアリルシラン類を合成した。
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