研究概要 |
π電子系ケイ素ポリマー主鎖中のSi-Si結合とπ電子系の軌道相互作用(σ-π共役)ならびに分子構造との関連を明らかにする目的で一連のポリマーを合成し、その分光学的、電気化学的、電気的、熱的特性の検討を通じて以下の成果を得た。[1]オリゴシラニレン-オリゴチエニレン交互ポリマー薄膜の電気化学的挙動を電位走査法(CV)と分光学的手法で明らかにした。中でも、ケイ素上にエトキシ基をもつモノシラニレン-ペンタチエニレン交互ポリマー薄膜はCVで極めて安定なドープ/脱ドープ過程を示し、数百回の掃引でも安定である。また、アミノ置換基を持つポリマー薄膜はヨウ素ドーピングで数S/cmの電導度を示す。[2]また、2,2'-ビチオフェンの3,3'-位をケイ素ユニットで架橋したジチエノシロールおよびジチエノジシラシクロヘキサジエン類の合成を行い、UVおよび発光スペクトル、CV測定、X線結晶構造解析、非経験的分子軌道計算を通じた検討から、これらが低いLUMOおよび狭いHOMO-LUMOギャップを持つことを明らかにした。さらに、ジチエノシロール骨格およびチオフェン環を含むオリゴシラニレン交互ポリマーも合成し、ケイ素架橋に起因する特異な物性を明らかにした。 また、各種σ-π共役型ポリマーの機能材料への展開を試みた。オリゴチエニレン系ポリマーは積層型電界発光素子のホール輸送材料として優れた性質を持ち、またπ電子系として9,10-ジエチニルアントラセンユニットを含む交互ポリマーはさらに優れた性質を持つことを明らかにした。またジチエノシロール類が電子輸送特性に優れていることを見いだした。その他、ビス(エチニルフェニル)シラニレン-フェニレン交互ポリマーの耐熱性材料への応用について検討した。特にm-フェニレン系は5%重量減温度(Td_5)が711℃であり、優れた耐熱性を持つことを明らかにした。
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