研究概要 |
カルボキシル基,あるいはアミド基を持つトリアリールビスムタンは,固体状態においてこれら官能基間の分子間水素結合により8分子が立方体状に配置した自己集合系を構築すること,さらに,その際生じる空孔はゲスト分子を包接するのに十分な大きさを持つことが期待される。本年度は,このような官能基を有するトリアリールビスムタンの合成と単離を目指して研究を行って来た。その結果,4-ヨード安息香酸エチルより誘導されるGrignard試薬を三塩化ビスマスと反応させることで,エチルエステル基を有するトリアリールビスムタンの合成することができた。これをアルカリ加水分解することで,目的とするカルボキシル基を有するトリアリールビスムタンの合成に成功した。今後,単結晶を調製し,X線構造解析による結晶構造の解明を行う予定である。 また,従来合成ができなかった,あるいは合成が困難であったニトロ基,シアノ基,ホルミル基のような電子求引性基を有するトリアリールビスムタンの合成法も同時に確立することができた。これにより,capto-dative置換基を有する種々のトリアリールビスムタンが合成可能となった。現在,紫外/可視吸収スペクトルにより電子状態を検討中である。 さらに,ジフェニルスルホンを骨格とするアリールオキシビスムタンでは,4-メトキシフェノールを水素結合により取り込んだ包接現象が観測された。 これらの成果の一部は,既に学術論文に掲載されることが決まっている。
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