高温における化学反応はカーボンアロイングの手法の1つとして期待できる。その化学反応を電子顕微鏡内のその場加熱実験で直接観察することは反応の機構を考察する上で有用である。従来の電顕内その場加熱実験は到達温度が低く、かつ、熱膨張による試料ドリフトのために分解能が低いことが難点であった。最近、著者らは全く新しい発想に基づいた試料熱ホルダーを開発した。このホルダーを用いることにより、2000℃以上の高温で原子レベルの分解能が容易に得られる。本研究はこのような実績を背景に高分解能/分析電子顕微鏡内でのその場加熱実験によって、カーボンアロイングを行うことにより新しい炭素材料を創生することを目的とする。 本年度は炭素と金属クロム、金属銅の反応を直接観察した。結晶質の黒鉛と金属Cr微粒子を1000℃に加熱すると、黒鉛と金属Crが反応して反応生成物が生成される。反応生成物の最表面は非晶質あるいは超微細粒で被覆されている。この表面皮膜層はおそらく炭素とおもわれる。反応生成物はCrの炭化物と思われる。
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