研究概要 |
層状無機格子の有機誘導体の層間にある有機残基を層間で炭化させ,新規な無機酸化物-炭素の複合材料を合成することを目的に研究を行った。本年度は,層状無機格子の有機誘導体としてベーマイトのグリコール誘導体を主として用い,これを窒素気流中で熱分解してアルミナ-炭素複合体とし,さらにCo-Mo触媒を担持して,そのチオフェンの脱硫活性を検討した。比較のためベーマイトのグリコール誘導体を空気中で熱分解して得たアルミナ,およびこのアルミナにフェノール樹脂を担持後熱分解して調製した炭素/アルミナも検討した。アルミナに担持した触媒の単位重量当たり,単位時間当たりのチオフェン脱硫活性は工業的に用いられている触媒の活性に匹敵し,炭素/アルミナに担持したCo-Mo触媒もアルミナに担持した触媒と同程度の活性を示した。これに対し,アルミナ-炭素複合体に担持した触媒は,このアルミナに担持した触媒よりもかなり高い活性を示し,また,活性化エネルギーもアルミナ担持触媒より低下し,担体中に残留している炭素の電子的効果が認められた。また,アルミナ-炭素複合体に担持した触媒の方が炭素/アルミナに担持した触媒より高い活性を示したことより,前者の高い活性が,複合体のアルミナ粒子外表面に残留する炭素に触媒が担持されているためという可能性は否定できた。アルミナ-炭素複合体がアルミナの表面機能を持っており,モリブデンがアルミナ表面と強い相互作用を持っているので,触媒の安定性にも問題は認められなかった。このアルミナ-炭素複合体はベーマイトのグリコール誘導体がランダムの会合したことによる極めて大きな平均細孔径と細孔容積を持っており,アルミナ-炭素複合体に担持したCo-Mo触媒は細孔内拡散が問題となる高沸点油の脱硫に応用することが期待できる。
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