研究概要 |
ある種の遷移金属錯体とフラーレンC_<60>との電気化学的反応により、遷移金属-C_<60>アロイ相がアモルファス固体として得られることがわかった。脱離能に優れた配位子および2個の塩化物イオンを有する有機金属錯体MCl2L(M=Pd, Pt;, L=2PhCN, 2CH_3CN, bpy, cod)とC_<60>とを窒素雰囲気下、混合溶媒(PhCN / EtOHないしはPhCN / MeOH)に溶解させ、H型電解セル中、白金電極に定電流(1〜2μA)を流しながら2〜3週間静置させたところ、陰極上に銀黒色固体が得られた。析出した物質は試みたすべての有機溶媒に不溶であった。固体試料のIR、Raman、MALDI-TOF MS、EDX、ESR、XPS、XRD、AFM、元素分析などの測定を行った。ESR測定ではピークが観測されないことから生成物はアニオンラジカルではない。MALDl-TOF MSからC_<60>の存在を確認したが、生成物のIRスペクトルでは、脱離配位子が存在せず、またC_<60>の4本の吸収ピークの内526cm^<-1>以外のピークは消失し、さらにRamanスペクトルでもC_<60>特有のピークが消失しておりアモルファス炭素様の形状を示した。元素分析、EDXよりClは生成物中に存在せず、出発原料の金属錯体中の塩化物イオンも脱離していることがわかった。XPSより生成した固体に含まれるPd, Ptは共に0価であった。また、XRD, AFMから、金属はクラスター化した粒界として存在している可能性がある。伝導特性を調べたところ絶縁体であった。電解合成により、遷移金属融合型フラーレン系新規アモルファス炭素材料が得られることが明らかになった。
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