研究概要 |
III-V族希薄磁性半導体(Ga_<1-x-y-z>Mn↑_xMn↓_yX_z)As混晶,およびIII-V/III-Vタイプ希薄磁性半導体格子(In_<1-x-y>Mn↑_xMn↓_y)As/(Al_<1-z>Be_z)Sb,II-VI/III-Vタイプ希薄磁性半導体超格子(Cd_<1-x-y>Mn↑_xMn↓_y)Te/(Al_<1-z>Y_z)(As_<1-w>Z_wの電子状態をKKR-CPA法および密度汎関数法の局所近似にもとづいて第一原理的に計算した.ここでMn↑とMn↓はそれぞれ磁化にたいして平行および反平行な局所磁気モーメントを持ったマンガン原子,XはAsでIII族位置に入ったV族不純物原子,Y,Z,はC,Si,GeなどのIV族元素である.(Ga,Mn)AsではMnはアクセプタとなりp型伝導を示すが(Cd,Mn)Te/(Al,X)(As,Y)ではXやYの濃度がゼロの時にはキャリアが存在しない.いずれも不純物濃度z,wを変えることによってキャリア濃度を調整することができる.キャリア濃度の高いところでは系は強磁性,キャリア濃度の低いところでスピングラス相を生じる.上向きモーメント,下向きモーメントを持つMn原子が不規則に存在する可能性を考慮した計算を行い,以下の結論を得た. ・(Ga,Mn)Asではzの小さいところでキャリア濃度は高く,強磁性が安定である.Zの増加とともにキャリア濃度は減少し,dホールの消失にともないスピングラス相が安定化される. ・強磁性が生じるメカニズムは二重交換相互作用の一形態である.低キャリア濃度でスピングラス相が安定化する理由は二重交換相互作用の禁止によって,超交換相互作用のみが働くためである ・(In,Mn)As/(Al,Be)Sbではz=0においても強磁性が安定である.以前の結果ではこのときスピングラス相が安定であったが計算精度の向上によって結論が変わった.Zの増加とともに,InAs層に対するキャリア注入が起こり,強磁性が安定化される.強磁性の安定化に関しては以前の結論と変わりない. ・(Cd,Mn)Te/(Al,X)(As,Y)においてn型ドーピングをしても(Cd,Mn)Te層にはd成分をもったキャリアは注入されず,強磁性は起こらない.XとしてCを用いるホールドーピングとなり,約10%程度のC添加で強磁性が発生する。YとしてCを用いて不純物準位が価電子帯のすぐ上に出来るためにある程度の濃度をいれるとやはりホールドーピングとして働く.このためXとYの両方にCを用いると容易に強磁性が安定化される.
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