最近のKTeVの実験およびBNL-Columbiaでの数値計算の結果は、弱い相互作用の本質的な理解には、格子ゲージ理論の計算が必須であることを示唆している。このことに、鑑みまた最近の理論的な発展に刺激され、格子ゲージ理論および連続体上のゲージ理論の量子論の基礎的な側面を研究した。とくに、フェルミ粒子の扱いに最近大きな進歩が見られたが、この方面の問題を重点的に研究した。具体的には、格子上のフェルミ粒子が持つ基本的な対称性であるカイラル対称性とその量子論に現れる量子異常の考察を行った。経路積分では量子異常は積分変数の変換に伴うJacobianとして定式化されるが、格子理論における指数定理とか量子異常の計算は一般的には複雑であり、この問題の簡単なより見通しの良い定式化を与えた。この研究の結果として、格子理論における種の倍増に伴う非物理的な粒子の指数定理における役割とPauli-Villars正則化における補助場の役割が非常に類似していることが分かった。すなわち、非物理的な自由度を含まないHilbert空間においては、Dirac行列γ_5の蹟はゼロにならないことを示した。これは、カイラル量子異常の最も簡単な特徴づけと考えられる。また、ゲージ理論におけるゲージ固定に関しても、過去におけるよりももっと広いゲージ条件が少なくとも摂動計算においては、同等な結果を与えることを示した。この定式化はいわゆるGribovの問題と呼ばれるものの分析および格子ゲージ理論の数値計算に役立つことが期待される。
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