研究概要 |
道路建設をはじめとする地域基盤整備事業においては、従来から環境に対する配慮は様々な形で実施されてきている.しかし,それらの環境配慮の多くの部分は,経験的に基づく現場対応のものが中心であり,必ずしも,事業全般にわたって,体系的に整理された上で実施してきたものとはなっていない.一方,環境問題に対する近年の認識の高まりから,地域基盤整備事業においても,従来の狭い枠での環境自前評価にとどまらず,環境マネジメントと呼ばれる広い枠において、発生物に関する適切な対応がより強く求められてくる.そのため,事業全体を通しての発生物に対応する基本的な考え方を合理的に設定することが極めて重要な課題となっている.本研究においては,上記の社会的必要性を鑑み,ライフサイクルコストの視点をふまえての,道路建設をはじめとする地域基盤整備事業のあり方について新たな枠組みを作ることを研究の目的とした.具体的には,新SNA型産業連関表に,新たな廃棄物再生産業,回収業,処理業の3産業を加えたもの作成し,取引を各サービスと捉えることによって,従来の産業連関表の枠組みに取り込むシステムを構築した.その上で,産業連関表が持つ全産業を網羅する広い枠での分析を可能にするというメリットを活かし,ある事業の廃棄物が全産業のエミッションに与える影響を考察できるシステムとした.これを用いて,盛土,高架,トンネルの3つの道路の構造物の中から最小エミッションである構造物を選定するケースを例にとり,直接的な工事から発生するエミッションと産業全体から発生するエミッションでは,選択結果が異なることを示した.
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