研究概要 |
まず本研究の位置付けの確認として,現在,なお処理すべき対象としてPCB含有絶縁油,とくに低濃度(50-100ppm以下)のものが大量に保管されているところから,PCBの選択的分解による絶縁油の回収を最終目標とすることにした.対象油としてはシリコンオイルを含む波長340nm以上の光吸収がない絶縁油とした.最初に本研究室で従前から使用しているTiO_2薄膜を壁面とする平行平板型光触媒反応器を設置した回分式循環系を利用し,波長選択せずに高圧水銀灯を照射することによりPCB混合標品(6塩素化体を中心とする4-8塩素化体混合物)が水中で酸化分解されることを確認した.なお,絶縁油中の微量PCBを定量するためにカラムクロマト法を利用した予備処理を検討中である. さて本年度は,長波長域での選択的分解促進を図ることを目的とし,長波長光利用率増大を期待してクロム添加チタニア光触媒調製を行うと共に,照射波長を長波長側に限定する光源としてBlack-light,疑似太陽光などの利用を試み,まず,光触媒酸化反応に関わる活性種の挙動をギ酸の酸化分解を利用して検討した.クロム添加チタニア光触媒調製法としては,チタンテトライソプロポキシドと酢酸クロム(III)によるトランスエステル化反応を利用した.生成ゾルを直径2.0-2.8mmのガラスビーズに担持させ,乾燥後500-700℃,1h焼成することにより触媒を得た.なお予備処理としてこのクロム添加チタニア担持光触媒ビーズを254nm光照射下で超音波洗浄することにより,触媒からのTOC溶出が無視できることを確認した.触媒ビーズ30gを内径10mmのパイレックス管に充填した反応管を回分式循環系内に設置し,Black-light(ToshibaFL20S-BLB,20W)及び疑似太陽光,TRUE-LITE(DURO-TEST Corp.,20W)各2本を用いて光照射した.初濃度0.5mMのギ酸を分解した結果によると,クロム添加により疑似太陽光照射下でも分解速度が増大し,また,Black-light照射下ではクロム添加量が増大するほど,またガラスビーズヘの触媒担持回数が多いほど分解速度の増大が顕著であった.なお,触媒焼成温度が高いほど触媒活性は低下する.
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