研究概要 |
植物資源の機能性分子素材化を達成する要素技術として,本研究では新たに3相分離システム(2 Step Process III)を考案し,その効率を検討した。フェノール誘導体を非水系溶媒に溶解しリグノセルロース系試料に浸透,リグニンを溶媒和後,過剰区分を分離する。回収区分は次ステップにてリサイクル活用する。高濃度酸水溶液を加え相分離系を形成させ,リグニン,炭水化物区分を変換後,非水系溶媒を加える。系は3相に分離し,上層には未反応フェノールが抽出され,中層にはリグニン区分がベルト状に固相を形成する。さらに下層には糖質を溶解した水相が分離する。従来法(1段法,2段法)にて誘導したリグノフェノールとその収率および性状を比較したところ,両者に全く差異は見出されなかった。 各種植物系バイオマスの変換分離性は,オリジナル試料の場合,針葉樹<広葉樹<草本の順で高く,この差は天然リグニンのネットワーク構造の差異に基づく。針葉樹,広葉樹および草本それぞれのグループ内において,相分離システムに対し樹種特性は見出されなかった。2次製品変換体の場合,新聞古紙等リグノセルロース系ファイバー試料は効率よく変換され,機能性リグノフェノールが迅速に誘導された。 リグノ-p-クレゾール,リグノ-2,4-ジメチルフェノールは,塩基性条件下,ユニット構造におけるフェノキシドイオンの分子内求核攻撃(スイッチング機能)によって効果的に低分子化した。ポリマー末端のリグニン母体フェノール性芳香核に加え,クレゾール核上に活性サイトを有するリグノ-p-クレゾールはメチロール基導入後,架橋によりネットワーク型構造へと生長した。一方,リグノ-2,4-ジメチルフェノールは,ポリマー末端のみに反応性を有するため,末端に導入したメチロール基の架橋によりリニア型高分子へと生長した。
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