研究概要 |
食をめぐる物質循環には,3つのサイクルがある。その第一は,食物自体のサイクルである。第二のサイクルは,食物を循環させるために直接投入される化石燃料などの物質である。第三のサイクルは,食物を循環させるために間接的に投入される化石燃料等の資源・エネルギーである。ゼロエミッション化を評価する際には,この3つのサイクルの比率,つまり食生活起因の物質循環のためにさらに直接・間接に投入される化石燃料(炭素)が重要な評価尺度の一つとなりうる。 (1)食物起因の物質循環:炭素及び窒素を指標として ここでは、食物起因の物質循環を記述するために、福岡市をケーススタディ対象に、炭素及び窒素を指標として明らかにした。具体的には、全国的な食料摂取に関する統計、福岡市の廃棄物及び排水処理に関する情報をもとに、元素ごとの含有量を求めた。食料中の各物質量の推計には栄養素ごとの元素含有率から推計した。また、廃棄物及び排水処理プロセス後の自然界への放出率については、可能な限り福岡市のケースに従い、入手できない部分については、全国平均または特定の調査を利用した。その結果、炭素では、呼吸による大気放出分を除いた部分の約82.5%が気圏、4.7%が水圏、12.8%が地圏へと放出されていることを示した。 (2)食生活に付随した物質循環:CO_2を指標として 算定に際しては、生産、加工、保存、輸送、流通、消費の各プロセスごとに行い、輸入分については、国内生産及び加工と同じ原単位を使用した。直接排出量については、各プロセスにおけるエネルギー投入量から算定し、必要に応じ、食生活に関連する部分に按分した。間接排出量については、産業連関表における関連産業への投入金額に二酸化炭素排出原単位を乗じて算出した。これによると、直接CO_2排出のうち生産過程で31%、消費過程で27%、廃棄物及び排水処理過程が14%であることがわかった。ただし、廃棄物及び排水処理過程は間接分を含んでいる。
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