研究概要 |
Cu系高温超伝導体をはじめとする機能性酸化物はペロブスカイト構造をベースとした原子層から成る層状構造を有する自然超格子であり、安全な界面を有する人工の積層型接合を実現する為には様々な原子層間の結合および物性をナノスケール・局所的に評価する事が重要である。反射高速電子線回折装置(RHEED)及び原子分解能が期待できる超高真空中非接触型走査型原子間力顕微鏡(UHV-NC-AFM)を併用したレーザMBE法により、ペロブスカイト型酸化物磁性体薄膜の(1)表面磁性の検出および(2)原子層積層による薄膜形成を行った。 【1】バルク体では反強磁性を示すペロブスカイト(La_<0.15>Ca_<0.85>)MnO_3の薄膜をLaAlO_3(001)単結晶基板上に作成し、Coコートした磁性体チップを用いたNC-AFMにより最表面構造及び磁性観察を行った。Figに同一場所で測定した(a)Non-Contact mode AFM像,(b)Contact mode AFM像を示す。通常のContact-mode像に於いては磁気ドメインは検出されず、原子層レベルで平坦な表面形状のみが確認される。対してNC-AFM像では明瞭に、薄膜表面に存在する磁気ドメインが観察された。ペロブスカイト(100)最表面原子層はバルクと異なり磁気モーメントが誘起される事を高感度なUHV-NC-AFMを用いる事によりナノスケールで見い出した。 【2】層状ペロブスカイト磁性酸化物(La,Sr)_3Mn_2O_7を積層シーケンス、SrO/(La,Sr)MnO_3/SrO/(La,Sr)MnO_3....による原子層積層法により初めて作成した。従来報告されているc軸配向薄膜形成温度(950℃)より遥かに低い580℃で強磁性を示すc軸配向エピタキシャル薄膜が得られた。この結果により層状酸化物に於いて最表面終端原子層を任意選択的(遷移金属終端面あるいはブロック層終端面)に形成する事が出来る事を示した。この原子層積層法と超高感度なUHV-NC-AFMを組み合わせることにより、様々な原子層の物性(磁性、結合力など)が評価できる。
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