研究概要 |
与えられた記号列から,それらを生成する確立が大きな隠れマルコフモデル(Hidden Markov Model, 以下HMM)を推定する,いわゆるHMM推定問題は,音声認識やアミノ酸系列の解析などに広く応用されている.これに関しては,従来,Baum-Welch法,Gradient Deacent法(GD法),相対エトンロピー法などに代表されるバッチ型手法に多く用いられてきた.対象とする問題の大型化に伴い,入力とする記号列の全てが同時にメモリに入りきらないケースが多く発生するようになり,これに対応すべく,一つずつ系列を入力して逐次的にHMMを更新してゆくオンライン型の手法が,近年特に要求されるところになっている.GD法,相対エントロピー法については,従来法をほとんどそのままオンライン型に拡張可能であったものの,Baum-Welch法のオンライン化については未解決とされてきた.本研究では,Baum-Welch法に,ブースティングの手法においてよく用いられる学習定数をHMMの更新速度を制御するものとして導入することにより,オンラインモデル下でも適用可能となるように拡張した.また,提案した手法が,推定対象にある条件を設けた場合には,GD法や相対エントロピー法をそのままオンラインモデルのもとで適用した場合よりも,優れた性能を持つことを計算機実験により検証した.更に,本手法は,時刻が進むにつれて対象となるHMMが変化してゆく場合において,これを追従して学習する能力を有することを確かめた.これは,バッチ型アルゴリズムには備わっていない能力であり,この点からも提案手法の優位性が確かめられた.
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