研究概要 |
今年度本研究において検討を行なったのは以下の通りである. 1)大量データ解析システムの構築 あけぼの衛星が取得した観測生データから解析用途に応じて一次処理したデータを取りだし,オンライン化するシステムの検討および構築を行なった. 2)磁気圏内の波動強度分布マップの作成 地球磁気圏内で観測される電磁波動から磁気圏構造や圏内の物理過程の様相を発見的に解析するために,先に掲げた大量データ解析システムを利用して,あけぼの衛星で観測された10年間のデータに基づく地球近傍磁気圏内の波動の強度分布マップを作成し,各種波動活動の周波数特性と,ローカルタイム・季節・太陽活動度・地磁気活動度変化による強度依存性を定量的に調べた.さらに,波動の種別を計算機上で自動判別するアルゴリズムとして,波動強度の頻度分布解析という新たな手法を開発し,同手法が種別分類に有力であることを確認した. 3)波動の到来方向推定に関する研究 波動分布関数法は衛星上で観測された波動の到来方向推定のもっとも有力な手法であるが,必ずしも一意に解が決定できない逆問題であり,従来提唱された手法にはさまざまな問題点があった.我々は,到来波のエネルギー分布がガウス状に分布していると仮定し,最適なパラメータをフィッティングにより求めるモデルを提唱しその有効性を検証した.パラメータの推定には最適な初期値が必要だが,パラメータの全探索は計算量が膨大で現実的でないため,ニューラルネットのホップフィールドマシーンなどで用いられるエネルギー関数の概念を導入した初期値探索法を開発した.これにより先験的知識なしに,物理的に意味のある到来波の数と分布状態を知ると共に,最終的に得られた解の良さを客観的に評価することが可能となった.
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