研究概要 |
標的細胞に対して選択的な増殖阻害分子を構築する目的で調製したヒト塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)とヒト膵臓RNase1の融合蛋白質は、約3μM濃度でFGF受容体高発現マウス黒色腫B16/BL6細胞株の増殖を50%阻害することを先に明らかにしたが、より強力な細胞増殖阻害分子を構築するために、毒素ドメインであるRnaseそのものの機能強化を試みた。通常無毒なRnaseに細胞毒機能を発現させるためにはI)細胞に取り込まれやすくすること,ii)細胞内のインヒビターによってRNA分解活性が阻害されないようにすること,iii)細胞内での寿命をのばすこと等が求められる。そこでI)を達成するためにカルボキシル基をアミド化し,プラスの実効電荷を種々に変化させたウシRNaseA誘導体を調製した。その結果,アミド化したRnaseはインヒビターで阻害されず,すべて細胞毒性を示すこと,またプラスの実効電荷の大きいものほど細胞によく取り込まれ,その結果より強い細胞毒性を示すことがわかった。すなわちカルボキシル基のアミド化はI)のみならずii)の達成にも有効であった。正電荷の増大により細胞表面の負電荷との相互作用で細胞に取り込まれやすくなったことに加えて,カルボキシル基の修飾によりインヒビターとの相互作用も低下したものと考えられる。一方ダイマー化によりii)を達成する目的で5種類のヒトRnaseを用いてドメイン交換ダイマーの形成能を調べた結果,Rnase1とRnase4が効率よくダイマー化することがわかった。さらにRNaseAのドメイン交換ダイマーの不安定な四次構造を二価性架橋試薬により固定することにも成功した。今後これらの潜在的機能を強化したRnase分子に細胞標的能を付与し,標的細胞に対して選択的で強力な増殖阻害分子を構築する計画である。
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