研究概要 |
平成11年度は,標的化リポソームに関する検討,核内の特異的転写阻害に関する検討,核内送達量の定量化に関する検討を行った. (1)トランスフェリン(Tf)をリガンドとした癌細胞標的化リポソームによる抗腫瘍効果:血中滞留性リポソームのPEGの先端にTfを結合させて,がん細胞を選択的に認識する標的化リポソームを調製した.このリポソームにドキソルビシンを封入し,Tf-receptorを介して細胞内へ抗癌剤の導入させた.その結果,ドキソルビシンに耐性である癌細胞に対しても有効となり,Tf-receptorを標的とした細胞内送達の有用性を示すことができた. (2)転写阻害リガンドの合成とin vitro系におけるTFIIHの転写因子阻害実験:RNAポリメラーゼIIの最大サブユニットRPB1(分子量約200kDa)のC末端にあるCTD(C-Terminal Domain)とよばれる繰り返し配列に対するペプチドを合成した.精製した五つの基本転写因子とRNAポリメラーゼIIからなる再構築系にて転写阻害活性について検討したところ,IC50は約1mMであり,さらに特異性の高いリガンドについて現在検討中である. (3)核内送達遺伝子の定量法の確立:本年度はサザンブロッティング法に基づいた核内プラスミドの定量法を新たに確立した.その結果,PCR法よりも正確に核内プラスミド量の定量が可能となった.
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