研究概要 |
本研究においては、環化付加等を活用したフラーレン誘導体合成手法の開発を行い、以下の成果を得た。 1 Diels-Alder反応では、dis(methylene)butanedioateとのDiels-Alder環化を行い、三級ブチルエステルに関しては酸処理によりvic-ジカルボン酸を得た。これは無水酢酸との反応により酸無水物へ誘導され、更にこれを利用して保護されたPhCH_2OCONH(CH_2)_3OHとの反応から一種のフラーレンアミノ酸が合成された。シクロオクタテロラエンとは5等量110℃で加熱したところ、収率よく期待される環化付加体を得た。これで一挙に2種類の二重結合を表面に導入できることになるが、これらの二重結合の反応性はフラーレン殻のそれとは異なり親電子的であるため、種々の親電子剤の付加が矛盾なくおこった。 2 1,3-双極性環化付加反応では、先に原型となるテトラヒドロチオフェン縮合フラーレンの合成を報告したが、この2付加体のスホキシドやスルホニウム塩の生理活性作用を現在検討中である。この原型チオカルボニルイリドに対して、立体的に嵩高い系試薬を過剰用いることにより、T_h対称の6付加体を加えた。この構造はEL素子として有用であることが示されたピロリジン6付加体のチア類緑体であり、光物性は興味深い。一方イソニトリルは形式的[3+2]環化付加反応により1-ピロリンが生成することが分かった。触媒をCu_2Oとしたところ円滑に反応は進行し、一般性のある新規[3+2]環化付加足り得ることが明らかとなった。 3 以上のような環化付加とは別に、無機試薬の介在をした付加反応にも検討を加えた。NaN_3,Na_2CO_3,NaNo_2は窒素雰囲気では反応性を示さないものの、空気に晒した場合には沈殿を与え、またsiloxy(ethoxy)cyclopropaneはTiCl_4ではなくFeCl_3と反応させると1,2,4付加体を与えることがMS解析から予測された。
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