研究概要 |
概要 1.パラテルフェニルの水還元水素発生に対する光増感作用と塩効果 パラテルフェニル(TP)は電子供与体であるトリエチルアミン(TEA)と電子メディエーターである貴金属コロイドの存在下に紫外線を照射すると,水の水素分子への還元反応を引き起こす光増感剤として機能する。この反応系では,TPの一重項励起状態がTEAに還元的に消光されて生じるアニオンラジカル(TP・-)が重要な反応活性種である。TP・-は電子移動と競争的にプロトン化を受けて徐々に触媒活性を失うが,その寿命を延ばすことで光触媒活性の向上を図れると考え,各種の塩を添加し光増感水還元反応を行った。 臭化テトラオクチルアンモニウムの添加により水素の生成量は格段に向上し,TPの分解は大きく抑制され,光照射3時間後のターンオーバー数は,7倍にも増大した。TP・-の減衰速度は塩の添加により効果的に抑制され,長寿命化することが判明した。 2.部分フッ素化パラテルフェニルの水分子1電子酸化反応に対する光増感作用 TPの全ての水素をフッ素で置換したペルフルオロ体は,光照射下,電子受容体の酸素を過酸化水素へと還元しつつ,水をヒドロキシルラジカルへと酸化できる。そこで,種々の部分フッ素化パラテルフェニルを合成し,それらの光化学的光物理的物性の変化を明らかにすると共に,光増感活性の制御を試みた。 フッ素原子の置換数の増加に伴い,吸収,および蛍光の短波長シフトが見られた。各PTPのサイクリックボルタモグラムを測定した結果、フッ素化の度合いの増加に伴い大きく正側にシフトした。 フッ素化の度合いの異なるパラテルフェニルを用いることで,光物性,酸化電位を段階的に変化させることができ,光増感作用を制御することに成功した。
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