研究概要 |
水素結合中のプロトンの運動と電子状態が直接に結合する可能性が指摘されてきた[Pd(H_<2-χ>edag)(Hedag)]・TCNQ(χ【approximately equal】1/3)の熱容量を測定し,金属-絶縁体転移の転移機構を検討した.170K付近に金属-絶縁体転移による熱異常が認められた.転移による過剰エントロピーの大きさからプロトンの運動と絶縁化には直接の関係はないことがわかった.この金属-絶縁体相転移の低温で現れる12倍周期という超周期が,水素結合プロトンの欠損によって発生したキャリアのもつ一次元不安定性に由来する周期性と,プロトン欠損の空間的配列に内在する周期性の競合によって現れている可能性を指摘した.これは本物質について当初期待されたプロトン-電子間の相互作用とは異なるものの,新種の相互作用の現れと見なすべきものであると考えられる. ET骨格をもついくつかの有機伝導体の単結晶について熱容量を測定し,エチレン部分の配座転換運動の凍結によるガラス転移を発見した.とくに常圧下で最高の超伝導転移温度をもつκ-(ET)_2Cu[N(CN)_2]Brの超伝導転移温度などの電子物性がエチレン部分の運動の凍結によって大きな影響を受けていることを明らかにした. 電荷移動部分の結晶中での運動の可能性を検討するために,trans-stilbene(STB)-TCNQの熱容量を測定した.ガラス転移温度より高温側では電荷移動部分がクランクシャフト運動によって裏返っていることが明らかになった.
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