研究概要 |
種々のTPQ(9,10-ジヒドロ-o-ベンゼノアントラセン-1,4-ジオン)およびTPHQ(9,10-ジヒドロ-o-ベンゼノアントラセン-1,4-ジオール)誘導体を合成し、以下の物質の結晶構造を決定した。(I)5-クロロ-TPQ、(II)5,8-ジメチル-TPQ、(III)5,8-ジメチル-TPQ・1/2トルエン(-150℃)、(IV)5,8-ジメチル-TPQ・1/2パラキシレン、(V)1,4-ジヒドロ-1,4-ビス(ジシアノメチレン)トリプチセン(TP-TCNQ)、(VI)トリプチセンビスキノン(VII)5,8-ジメチル-TPHQ・2アセトニトリル。また5,8,13,16-テトラメチル-TPQ(VIII)の構造を再解析した。 TPQ、6,7-ジメチル-TPQ、I、II、V、VIIIいずれの結晶にも、弱いCT相互作用に基づくりボン状一次元超分子が確認され、これよりこれらの化合物にはTPQ_xTPHQ_<1-x>類似の二成分混晶を形成する可能性のあることが分かった。VIには上記超分子が存在せず混晶形成が不可能と判断された。混晶系の生成条件について更なる検討を要するが、これまでにI(黄色)と5-クロロ-TPHQ(無色)の二成分結晶(赤紫色、単結晶の質が不良で結晶構造未定)が得られ、昨年提案した二成分混晶の発色機構の妥当性が支持された。混晶調整の際、TPQ、I、IIとヒドロキノン(C_6H_6O_6)の興味深い反応過程(アセトニトリル溶液中)を見出した。 TPQおよびTPHQの5,8-ジメチル誘導体であるIIとVIIは共に包接能を有することが判明した。包接機構には、それぞれ、弱いCT相互作用、水素結合の関与が認められた。 TPQ誘導体/TPHQ誘導体二成分結晶における「発色サイト」設計・制御に関し、今後の展開に有用な基礎的な知見が見られた。
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