研究概要 |
分子強磁性体構築のためには、二次元、三次元に規則正しくスピンを集積することが必須である。これまで行ってきた基本戦略は、金属イオンを用いて規則的に分子を集積化し、更に光応答型磁気カップラーを用いて、多次元スピンネットワークを構築するというものである。実際に、光応答型磁気カップラーのジアゾジ(4-ピリジル)メタン1を用いて一次元金属錯体の構築を行い、光照射により900個のスピンを整列させることにより基本戦略の正当性を確認した。今回、多次元構造の構築を目指して、ビス及びトリス錯体形成が可能な2,2'_-ビピリジル基を持つ新規光応答型磁気カップラーを分子設計した。まず手始めに、4_-及び4,4'_-位に安定アミノキシルラジカルを持つ2,2'_-ビピリジン,4NOBPy,4,4'NOBPyとM(hfac)_2;M=Mn(II),Cu(II),Zn(II)金属錯体を合成し、その分子構造及び結晶構造をx-線構造解析により決定した。6種類の金属錯体の分子構造は非常に類似しており、ビピリジル基がシス配位した六配位構造をとっていた。金属イオンとの交換相互作用パラメータ(J_<R-M>/k_B)を求めた。ラジカルと金属イオンの間の磁気的相互作用の規則性は、対応するピリジン4NOPyの場合と同一であり、2,2'_-ビピリジル基の金属イオンへの強固な配位能によって両スピンは強く相互作用することが解った。また、4N_2BPyとCu(hfac)_2のMTHF溶液を1:1で混合することにより、ビピリジン銅錯体を調整した。得られた溶液について、極低温条件下、光照射前後のUV-Vis及びESRスペクトルの測定を行った。更に同様なマトリックス条件下、SQUIDを用いて光照射後の磁化の磁場依存性を測定し、光照射により発生したカルベンは強磁性的に銅イオンと相互作用し、基底四重項種が生成していることを確認した。
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