研究概要 |
近年,π-π相互作用や水素結合などの弱い相互作用によって形成される分子集合体の構築や,それらから発現する物性に興味が持たれ,盛んに研究されている。本研究では,トロポノイドの持つ水素結合能や金属錯体形成能,更には,π-π相互作用に焦点を当て,これらの性質を用いることによって高次集合体を構築することと,これらの集合体が発現する機能を明らかにすることを目的にした。既に,5-アルコキシトロポロンの金属錯体形成能を利用して錯体液晶を合成し,銅錯体(1)がスメクチックB相やG相などの高次のスメクチック相を発現するが,亜鉛錯体は非液晶であることなど,金属イオン種によって異なることを明らかにした。 そこで,1の配位子の構造を変えた2-アミノトロポン誘導体の銅錯体(2)を合成した。その結果を表に示す。偏光顕微鏡観察による光学組織から,冷却過程で,スメクチックC相(シュリーレン,ファン組織),スメクチックG相(モザイク組織)の2種のスメクチック相が観察された。対応する1の銅錯体と比較すると,転移温度が低下した。これはアミノ体2は1に比べて,分子の対称性が低下したことと,シス体とトランス体構造が共存するためと考えられる。 また,C_<14>H_<29>のアルキル鎖長を持つ2の小角X線回析測定を行い,液晶相における層構造を調べた。その結果、小角側にスメクチック層面由来の反射ピークが観測され,その層間隔は38.9A^^○であり,温度にほとんど依存しないことがわかった。また,半経験的分子軌道法計算によって見積もった分子長は49.9A^^○で,分子はおよそ44.2°傾いて配列していると考えられる。
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