研究概要 |
(A)へテロ環共役系高スピン分子の合成と微細構造ESRスぺクトルの完全解析法の確立/普及開殻系π共役電子ネットワークにへテロ核原子を導入する場合、多価荷電高スピン分子では、へテロ核サイトの荷電化によってスピン状態は極端な変調をうけ、高スピン状態と低スピン状態の反転さえ予想できる。引き続き6員環に窒素核を導入した5重項メタフェニレンプロトタイプ(1)、ビフェニルプロトタイプ(2)、1,3,5―べンゼンプロトタイプ(3)のへテロ共役高スピン分子の前駆体であるポリアジド化合物(4)大きな非局在能をもつπトポロジー系を合成した。プロトタイプ(1)と(3)については、窒素核サイトの直接カチオン化による基底スピン状態の変化を解明する。今年度は複雑な微細構造スぺクトルの完全解析法(固有共鳴磁場)の確立と普及をはかった。 (B)任意高スピン系および複雑・スピン混合系のスピン状態の直接同定を可能にする新磁気共鳴分光法/Xバンド2次元電子スピンニューテーション法(2D-ESTN)の開発と確立/新しい適用A02班で新たに合成されることが予想される特異な非局在開殻電子系のスピン構造の同定に寄与するためのものであり、引き続き以下に示す(1)、(2)の他10ケースのケテゴリーの下に、直接スピン同定を目的とした2D-ESTNの開発を行った;(1)群論的に高い対称性をもつ分子構造やクラスター構造をもち、強いスピン間相互作用が高対称場にある高スピン系、(2)低対称場だがスピン量子数Sが著しく大きな擬超高スピン系。平成11年度は、最終的にはS=12をもつπ系の直接同定を試み、分子スピン多重度の記録を更新するために目下実験を継続中である。一方、C_<60>フラーレン多価アニオン系について、初めて3価アニオン系の基底4重項状態を検出しただけでなく、高スピン状態と低スピン状態間の転換過程を見いだし、その過程の物理的な起源を解明した。その結果、これまでの多くの論争と矛盾した解釈に決着をつけた。
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