連星系形成の有力なシナリオによると、丸い分子雲コアが重力吸縮すると、高密度部が棒状に変形し、棒が分裂、分裂片が周囲のガスを降着して連星系へと進化する。このシナリオにもとづき、Zooming GridとNested Gridの2つの方法を用いて数値シミュレーションを行った。それぞれの結果は以下の通りである。 1.Zooming Gridを用いて、分子雲コアの高密度部が棒状に変形するいメカニズムと、その成長率を調べた。 Zooming Gridは、分子雲コアの高密度部分だけを追跡し、高解像度の数値シミュレーションを実現する。この数値シミュレーションにより、明らかになったことは以下の事柄である。 (1)棒状に変形するメカニズム : 分子雲コアが重力吸縮すると、高密度部でシアー運動が成長する。このシアー運動が、分子雲コアの高密度部を棒状に変形させる。一旦、棒状になると、自己重力で棒は細長くなる。 (2)変形の成長率 : 棒の扁平率は中心密度の1/6乗に比例して増加する。還元すれば、棒の成長率は時間の1/3乗に比例する。この成長率は、線形解析の結果と良い精度で一致する。 (3)棒形成の条件 : 典型的なモデルにおいて、球対称から10%程度変形している分子雲コアは、等温収縮中に棒状に変形する。 2.Nested Grid法を用いた数値シミュレーションコードを開発し、分子雲コアの重力収縮、棒状への変形、棒の分裂、分裂片への質量降着と、これまでになく長い進化を追跡した。Nested Grid法は、高密度部を高解像度で、低密度部を低解像度で計算する方法であるため、このような長い進化が追跡可能になる。この数値シミュレーションによって明らかになったことは以下の通りである。 (1)細長いファーストコアの分裂 : 長軸が短軸より3倍以上長い場合、ファーストコアは重力不安定により分裂する。逆に、長軸が短軸の長さの3倍よりも短い場合、ファーストコアは分裂せず、円盤状になる。 (2)分裂片の進化 : 分裂片の周囲に回転平衡円盤が形成される。分裂片はこの円盤のガスを降着しながら、質量を増加させる。
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