研究概要 |
1.三核銅クラスター構築のための混合三脚配位子の分子設計と合成: マルチ銅酸化酵素の構造モデルとしてキノリルジピリルメタンの種々の誘導体から三核銅錯体を合成し、その構造と電子状態との関係についてX線結晶構造を基にして詳細な議論を行った。特に、低温のX線結晶解析からキノリル基の動的挙動を明らかにした。構造的により良いモデルの合成に関しては現在進行中である 2.ピロールを含む非対称混合三脚配位子の合成: 2,3,4-トリメチル-5-エトキシカルボニルピロールの2位メチル基を臭素化して得られる臭化物と種々のアミンとの反応について検討を加え、ビス(ピロリルメチル)ピリジルメチルアミン、ビス(ピロリルメチル)ベンジルメチルアミン、および、ビス(ピリジルメチル)ピロリルメチルアミン等の新規配位子を得ることができた。 3.混合三脚配位子と銅(II)との錯体形成反応: 今回合成した新規なビス(ピロリルメチル)アミン配位子のピロール部のα位にはエトキシカルボニル基が置換している。このカルボニル酸素はピロール窒素と同時にキレート配位する場合もあるが、配位圏外に位置して水素結合部位として機能することを明らかにした。ベンジル体では水分子が配位結合と2点の水素結合によって捕捉された銅錯体が得られたが、同様に配位水を有する構造を持つ錯体は亜鉛、コバルトでも得られた。特にピリジルメチル体と銅との錯体形成では、この配位水が活性化された結果として、Cu(II)-O-Cu(II)構造を持つ4核銅錯体が得られた。この4核錯体の磁化率測定の結果、4つの銅(II)の間の興味ある相互作用が示唆されたので、その詳細な解析を行い、金属集積化による機能の開発に結びつけたい。また、これらの錯体は加水分解酵素のモデルと考えられるものであり、これを利用した金属触媒の開発は今後の検討課題である。
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