研究概要 |
本研究は、主として我々がこれまでに開発した種々の金属-金属結合を有する同種・異種金属三核錯体を有機連配位子を用いて様々な配向性を持たせながら逐次的に集積することにより新しい機能を持つ複合材料を開発し、その機構を分子レベルで解明しようとするものである。小クラスター分子の配向集積化は、金属―金属結合の新たな反応性・物性を生み出すだけでなく、配向の様式によって電気伝導性、分子認識性、光応答性等の性質を付加できることが予想され、新規多機能性複合材の開発の端緒を開くものと考えられる。 直鎖状白金三核錯体のビスイソシアニド配位子を用いた集積化: 白金三核ユニットの集積化を目指し、錯体[Pt_3(dpmp)_2(XylNC)_2](PF_6)_21と種々のビスイソニトリル(CNRNC)との反応を行った。Rに立体障害の少ない2,5-dimethyl-phenylene及びphenyleneを用いた場合には、集積化はクラスターダイマーで停止し緑色の[(CN-RNC)Pt_3(μ-dpmp)_2(CNRNC)Pt_3(μ-dpmp)_2(CNRNC)](PF_6)_4(6,7)が得られた。EXAFSの解析から集積体6,7におけるPt-Pt距離は2.85(4)〜2.86(4)Åで錯体5と同様の傾向が見られた。Rに立体障害の大きい2,3,5,6-tetramethyl phenylene,2,2',6,6'-tetramethyl bi-phenyleneを用いた場合には{[Pt_3(dpmp)_2(CNRNC)](PF_6)_2}_nの組成を持つクラスターポリマー(8,9)が得られた。特に、化合物8は単結晶として得られ、X線結晶構造解析によりFig.1に示す直鎖状ポリマー構造をとることが明らかとなった。金属-金属結合を持つ[Pt_3(dpmp)_2]^<2+>ユニット(av.Pt-Pt=2.677Å)が2,3,5,6-Me4phenylene-1,4-bisisocyanideにより共有結合で連結され一次元剛直ポリマー構造を形成している。結晶中での重合度nは約10^5程度と見積もられる。EXAFSの結界からもクラスターポリマー8,9はPt-Pt結合が約2.7Åの直鎖状三核構造をとることが明らかとなった。金属結合を持つ小クラスター高分子の構造が明らかにされた例は極めて少なく、また、本手法を用いれば、これまでに合成した種々の三核錯体を直鎖状に集積し、Rigid-rod Polymer, Molecalar Wire, Molecular Electronics, Chemically Modified Electrode等広範囲な複合材料に応用することが可能であると考えられる。クラスターポリマー8はほとんどの有機溶媒に不溶であるが、アセトニトリル及びDMFには可溶で、^1H及び^<31>PNMRが対称的な三核構造を示すことから溶液中でもポリマー構造を保持している可能性が強いものと思われる。現在、STM及びAFMによる構造の検討を行っている。また、ポリマー8と様々な有機小分子との反応も検討した。
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