研究概要 |
本研究では,ディスクリートな二核,三核,および四核錯体の合成を行い,それらを分子デバイスとして組み合わせた集積型金属錯体の構築を行った。架橋配位子には種々のカルボキシラトやアルコキシラトおよびフェノキソ架橋性多座配位子を用い,銅,マンガン,バナジウム等の多核錯体を合成・単離に成功し,X線結晶構造解析により構造の詳細を明らかにした。コハク酸やグルタル酸のような分子内に2つのカルボキシラト基を有する分子を多核ユニット間架橋配位子として用いることにより,新化合物である四核銅(II)錯体[Cu_2(NO_3)(L)(phen)_2(CH_3OH)]_2(NO_3)_2(L=コハク酸,グルタル酸)が得られた。この錯体はビスμカルボキシラト二核銅(II)ユニットが炭素鎖で連結された構造であり,それぞれの二核ユニットはphenのスタッキングにより構造が安定化されていると考えられる。ユニット内の銅イオン間の反強磁性的相互作用は-22cm^<-1>程度であり,通常のビスμカルボキシラト二核銅(II)錯体に比べ弱く,ユニット間の架橋によって磁気軌道の重なりが低下したためと思われる。一方,ユニット間の磁気的相互作用は無視できる程度に小さく,結果としてディスクリートな二核モデルとして磁性の解釈が可能であることが示された。また架橋配位子にピラゾールを用いることで,μ_3オキソ三核バナジウム(IV)錯体を得ることができた。解析途中のため原子間距離や角度の詳細はわからないが,バナジウムイオン間は2つのピラゾラトとエトキソ基で架橋された3角形型配置をとっていることが確かめられた。
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