研究概要 |
本年度も初年度同様、(1)酢酸架橋白金二核錯体一次元系[Pt_2(NH_3)_4(μ-CH_3CO_2)_2]_ω、(2)擬一次元ハロゲン架橋白金ブルー系[Pt(2.5+)_4(NH_3)_8(μ-amidato)_4-X]_ω(X=Cl, Br, or I)、(3)可視吸収発光性ビピリジン白金二核錯体一次元系[Pt_2(bpy)_2(μ-pivalamidato)_2]_ωの合成、構造決定、および物性調査を進めた。研究(1)については、定電流電解結晶化法により目的の白金一次元化合物を黒色針状結晶として得ることに成功した。研究(2)については、目的物前駆体として両軸位にBr/Iが配位したPt(III)_2二核錯体の単離と結晶構造解析を行った。Br配位錯体については2種の結晶構造解析に成功したが、I配位錯体は常温空気中で不安定であるため、解析には至らなかった。本年度は主に研究(3)において、飛躍的に研究成果が得られた。[Pt_2(bpy)_2(μ-pivalamidato)_2]^<2+>カチオンと各種白金単核アニオン([Pt(ox)_2]^<2->,[PtCl_4]^<2->,[Pt(CN)_4]^<2->)を混合することにより析出するマグヌス型複塩が目的とする白金一次元鎖を与えることを見いだした。結晶化には独自に試行錯誤により開拓した溶質拡散法を用いた。特に、[Pt_2(bpy)_2(μ-pivalamidato)_2]^<2+>と[Pt(ox)_2]^<2->の混合系からは、反応条件の違いにより、合計5種の新規複塩結晶(黄色針状晶、燈色針状晶、濃青色板状晶、黒色針状晶、紫色板状晶)が得られることを見いだした。最後の紫色板状晶を除く4種については、元素分析、結晶構造、分光化学特性、磁化率、伝導度などの測定で評価することに成功した。黒色針状結晶は、一次元的に白金白金間結合を有する混合原子価錯体(Pt(2.33333...+)_∞;反磁性)については今後さらに詳細な物性評価を行う予定である。
|