1)核移植マウスの作製と評価 東京農大の河野グループにより、脱核したB6マウス卵に(JFxJF)F1および(JFxB6)F1の受精卵核を移植したマウスが作製された。B6およびJFのミトコンドリアDNA上の制限酵素部位型を同定、PCR-RFLPによって両各移植系統のミトコンドリアDNAを検査した。その結果、前者11匹中に1匹、後者19匹中に4匹、移植核に付着した細胞質に由来すると思われるJFミトコンドリアの混入を認めた。これらを除いた核移植マウスはミトコンドリア多型の影響を排したアレリックメッセージディスプレイ(AMD)スクリーニングに利用できると考えられたので、これらの各種臓器からRNAを調製して、スクリーニングに着手した。 2)新規インプリント遺伝子MA10の発見 骨格筋を用いたAMDスクリーニングにより新規の父性発現遺伝子MA10を同定した。MA10は、骨格筋や脳では父性アレルのみが発現しているが、腸管や精巣ではほぼ両アレル性に発現していることから、組織特異的なインプリンティングを受けていることが判明した。MA10のcDNAには明らかなORFは認められなかった。またMA10のcDNAをFISHでマップすると7番染色体遠位部にマップされた。ここはヒトのBeckwith-Wiedemann症候群(BWS)の原因座位に相当する領域であったので、この領域のコンティグを用いて詳細なマップを行い、母性発現遺伝子Kvlqt1領域に由来する新しいアンチセンス転写物であることを明らかにした。overgrowth syndromeであるBWSでは種々の腫瘍が好発することが知られており、MA10の機能には大変に興味深いものがある。
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