研究概要 |
骨肉腫、軟骨肉腫などの骨関連腫瘍は形態学的特徴をもって分類されている。細胞の形態学的特徴を決定する重要な因子は細胞外基質蛋白の種類と発現様式である。骨関連基質蛋白として、種々のコラーゲンの他、オステオネクチン、オステオポンチン、マトリックス・グラ蛋白、オステオカルシン等が代表的なものとして知られている。我々は骨肉腫を中心とした骨関連腫瘍を手術材料より集め、悪性度、転移性の有無、組織学的な分類を行った後に骨基質蛋白の発現状況をノーザンハイブリダイゼーション、あるいはin situハイブリダイゼーション法によって検討した。正常の骨芽細胞分化過程においては、線維芽細胞様細胞から骨芽細胞、骨細胞と分化が進むにつれで、オステオネクチン、オステオポンチン、オステオカルシンの順に遺伝子発現が変化するが、悪性度の高い骨肉腫においては形態学的特徴と遺伝子発現様式が正常と一致しない腫瘍を複数認めた。特に線維芽細胞様形態を有し、オステオポンチン発現性骨肉腫細胞について極めて高い転移性、悪性度が認められた。我々はオステオポンチン遺伝子のin vivoにおける転写因子の研究を行ってきたので、この腫瘍におけるオステオポンチン高発現性の原因をこれまでin vivoにおいて同定した転写因子(Vitamin Dreceptor,Ets-1,PEBP2αA,MITF,PU.1)の発現異常に求め、これらの転写因子の遺伝子発現を検討している。また、我々はオステオポンチン遺伝子プロモーター領域にレポーター遺伝子を結合したDNA断片をマウス受精卵に導入し、骨芽細胞でレポーター遺伝子が発現するトランスジェニックマウスの系統を作成した。現在、p53遺伝子ノックアウトマウスと交配させ、骨肉腫好発性系統の作成を試みている。
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