研究課題/領域番号 |
11138244
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研究種目 |
特定領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
前田 浩 熊本大学, 医学部, 教授 (90004613)
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研究分担者 |
宮本 洋一 熊本大学, 医学部, 助手 (20295132)
澤 智裕 熊本大学, 医学部, 助手 (30284756)
赤池 孝章 熊本大学, 医学部, 助教授 (20231798)
小川 道雄 熊本大学, 医学部, 教授 (30028691)
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研究期間 (年度) |
1999
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研究課題ステータス |
完了 (2000年度)
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配分額 *注記 |
7,500千円 (直接経費: 7,500千円)
1999年度: 7,500千円 (直接経費: 7,500千円)
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キーワード | フリーラジカル / NO / バーオキシナイトライト / 遺伝子変異 / ウイルス感染病態 / 発癌 / パーオキシナイトライト |
研究概要 |
固型癌のうち、胃癌、肝癌、子宮癌などの原因が細菌やウイルスによることが次第に明らかになってきた。さらに、胆管や胆のう癌、食道癌も何らかの感染症に起因する容疑が濃くなってきた。これらの感染症と発癌に共通の事象として、それが長期にわたる慢性炎症を伴うこと、また活性酸素(スーパーオキサイドやH_2O_2、あるいはHOCl)や一酸化窒素(NO)などのフリーラジカル関連分子種が宿主の炎症反応に伴い、感染局所で過剰に生成していることである。さらに重要なことは、これらのラジカル分子種はDNAを容易に障害することである。そこで本研究では、これら微生物感染に伴う炎症反応におけるフリーラジカル種、特にNO関連フリーラジカルと発癌との関連に焦点を当てて検討を行った。 その結果、(1)これまでに報告したインフルエンザウイルス、サルモネラ菌に加え、I型ヘルペス単純ウイルス(HSV)の脳炎発症モデルにおいても誘導型NO合成酵素(iNOS)の発現の増強が見られ、また電子スピン共鳴法からもNOの産生が亢進していることが示された。HSV感染病巣において、NOとスーパーオキサイド(O_2^-)との反応産物であるパーオキシナイトライト(ONOO^-)などによりもたらされる生体内ニトロ化反応のマーカーであるニトロチロシンの生成が示唆された。(2)in vitroにおいてONOO^-と核酸との反応産物をHPLC法により解析した結果、ONOO^-はDNA、RNAいずれに対してもグアニン残基の酸化(オクソグアニンの生成)とニトロ化(ニトログアニンの生成)をもたらした。DNA鎖中に生じたニトログアニンは加水分解により自発的に脱塩基反応を起こしたが、RNA鎖中のニトログアニンは安定に保持され、DNAとRNAとではニトログアニンは異なる作用を示すことが考えられた。(3)in vitroにおいてセンダイウイルス(変異を調べるためにマーカーとしてgreen fluorescent protein(GFP)をゲノムに組み込んである)を生理的濃度のONOO^-(0.8μM)で処理すると有意にGFPの変異が上昇した。さらに、iNOS欠損マウスおよび野生型マウスを用いたin vivoの感染実験系において、GFP遺伝子に対するNO依存性の変異原性の上昇が確認された。 以上の結果より、微生物感染に伴う炎症局所ではNOやO_2^-、さらにはONOO^-などの活性窒素酸化物が過剰に産生され、タンパクや遺伝子にニトロ化をもたらしていることが示唆された。また、ONOO^-は遺伝子の変異を促進し、その作用は宿主細胞のみならず、病原体に対しても影響していることが考えられた。
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