研究概要 |
IAP(Inhibitor of Apoptosis Protein)ファミリー蛋白はウイルスから哺乳類まで広く保存されており、アポトーシスの抑制に関与している。我々は新しいマウIAPファミリーの遺伝子TIAP(Thymus and tesis IAP)をクローニングした。アミノ酸配列より、ヒトsurvivinのホモログであると考えられる。その発現は胸腺と精巣に強く認められその他の臓器においても増殖のさかんな細胞に強く発現している。本年度の研究により以下のことを明らかにした。 1.TIAPの細胞周期特異的な発現のメカニズムの解析: TIAP蛋白、mRNAともに培養細胞においては細胞周期のS-G2・M期にその発現が誘導される。また組織においても増殖の盛んな細胞において発現が認められる。TIAPの発現調節機構を知る目的でプロモーター領域の解析を行なった。Primer extension法、5′RACE法にて転写開始点を決定した(ATG翻訳開始点より100bp上流)。約1.2kbの5′flanking領域にはTATA boxはなく、AP2 site,NF-kB site,SP1 siteが存在した。また14箇所のCDE(Cell cycle dependent element)配列と1つのCHR(Cell cycle gene homology region)配列が認められた。CDEまたはCHRを欠失させたLuciferase asseyの結果よりTIAP遺伝子の5′UT内に隣接して存在するCDE,CHR配列が細胞周期特異的発現の制御に必須であることを明らかにした。 2.T細胞分化、増殖、腫瘍化におけるTIAPの役割の解析: Lck promoterを用いて胸腺および脾臓においてTIAP蛋白が高発現しているトランスジェニックマウスを3ライン確立した(Lck-TIAP-Tg)。これらTgマウスのT細胞の分化についてFACSにて解析したが異常は認められなかった。またT細胞のアポトーシスを起こす各種刺激(serum starvation,anti-CD3,gulucocorticoid,radiation,anti-Fas)に対する感受性についてAnnexin Vを用いフローサイトメトリーによって解析したがコントロールと比較して明らかな差は認められなかった。一方胸腺細胞および脾臓T細胞を抗CD3抗体、PMA,Ionomycin,ConAなどの各種マイトジェンで刺激し、増殖反応を調べた。その結果TgマウスにおいてPMA+Ionomycinの刺激による増殖反応が増強していた。 3.個体発生、分化におけるTIAPの機能解析: TIAPの生理的機能を調べる目的でTIAPノックアウトマウスの作製を行なった。現在キメラマウスを交配している。
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