研究課題/領域番号 |
11139218
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研究種目 |
特定領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
黒川 峰夫 東京大学, 医学部・附属病院, 助手 (80312320)
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研究分担者 |
高橋 宗春 東京大学, 医学部・附属病院, 医員
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研究期間 (年度) |
1999
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研究課題ステータス |
完了 (1999年度)
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配分額 *注記 |
4,600千円 (直接経費: 4,600千円)
1999年度: 4,600千円 (直接経費: 4,600千円)
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キーワード | Cas / アクチンストレスファイバー / 細胞骨格 / 細胞運動能 / Rho |
研究概要 |
Cas欠失線維芽細胞にCasの発現プラスミドを導入し、Cas導入線維芽細胞を樹立した。Cas欠失線維芽細胞は平らで円形の形態を示すが、Casを再導入した細胞は細長い紡錐形を示し、野生型の線維芽細胞と同様の形態を示した。またCas欠失線維芽細胞では、phalloidin染色にてアクチンストレスファイバーの形成不全が認められたが、Cas導入線維芽細胞ではアクチンストレスファイバーの形成が回復していた。これらの結果から、Cas欠失線維芽細胞の形態、細胞骨格異常は、Casの再導入によって正常化することが明らかとなった。Wound healing assayによる細胞移動の評価を行ったところ、Cas欠失線維芽細胞の運動能は野生型に比べて有意に低下していた。Cas導入細胞では欠失細胞の2倍以上の運動能を示し、野生型と同様のレベルに回復していた。ボイデンチャンバーを用いて、野生型とCas欠失線維芽細胞のフィブロネクチンヘの遊走能を比較した。その結果、Cas欠失線維芽細胞においてはフィブロネクチンヘの遊走は有意に低下していたが、Cas導入線維芽細胞では、遊走能がCas欠失線維芽細胞の3倍程度まで回復した。Cas欠失および導入線維芽細胞のフィブロネクチンヘ接着および伸展能を比較した。接着そのものに関しては両者は不変だが、接着15分後の伸展細胞の割合がCas欠失線維芽細胞では20%と低値であったのに対して、Cas導入線維芽細胞においては70%と上昇し、野生型と同等のレベルを示した。このように、Cas欠失線維芽細胞ではフィブロネクチンヘ接着後の細胞の伸展が有意に低下しているが、Casの導入によってその伸展能が回復することが明らかとなった。また野生型やCas導入細胞では、フィブロネクチン刺激によってそれぞれ分子量120kD、80kD、70kD、42kDの蛋白質のチロシンリン酸化が認められるが、Cas欠失線維芽細胞でもほぼ同様のチロシンリン酸化蛋白質が認められた。したがってCas欠失線維芽細胞における伸展能の低下は、蛋白質のチロシンリン酸化の阻害によるものの可能性は低いと考えられた。Cas欠失線維芽細胞に活性化Rhoを発現させたところ、アクチンストレスファイバーの形成が回復した。アクチンストレスファイバーの形成にはRhoが関与することが知られているが、Cas欠失線維芽細胞におけるアクチンストレスファイバーの形成不全にも、Rhoを介するシグナルが関与していることが示唆された。
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