研究概要 |
大腸癌の組織発生は腺腫を経て癌化する腺腫-癌説と、直接正常粘膜から癌化するde novo説の2つが考えられている。腺腫-癌説の発癌機構はAPC、K-rasやp53などの遺伝子異常の蓄積によって生ずることで説明されているが、de novo癌の発癌機構は未だに不明である。本研究ではde novo癌の発癌機構を明らかにするため、平坦陥凹型早期大腸癌について癌抑制遺伝子とLOH解析を行った。更にそれらの癌では18q21領域でのLOH頻度が高率であったため、その領域内の癌抑制遺伝子を調べた。 1)平坦陥凹型および隆起型早期大腸癌におけるAPCとp53遺伝子解析:平坦陥凹型20例と隆起型21例について、APCとp53遺伝子をPCR-SSCP解析した。特に陥凹部分を持つ(dep型と略す;IIa+IIc,IIc,IIc+IIa)癌では隆起型(I)に比べてAPC遺伝子変異の頻度が低いことが示唆された。 2)LOH解析:dep型大腸癌では18q21領域でのヘテロ接合性の消失(LOH)の頻度がI型に比べて有意に高いことを明らかにした。 3)18q21に位置する癌抑制遺伝子の解析:18q21内の存在する3種類の癌抑制遺伝子(Smad2,Smad4,DCC)について、PCR-SSCPまたは免疫組織染色で異常を調べたが、それらの変異はほとんど見つからなかった。 以上より、平坦陥凹型大腸癌のでAPCの関与は低く、その発癌機構は隆起型と異なることが示唆された。それらの癌では18q21領域に位置する癌抑制遺伝子が強く関連していることが考えられた。しかし、既知の以外の3種類の癌抑制遺伝子の可能性は低く、他の癌関連遺伝子遺伝子が重要と考えられた。現在、18q21に存在する他の癌関連遺伝子についてインターネットを用いて検索中である。
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