研究概要 |
癌遺伝子Wntはbeta-cateninを転写促進因子へ変換させるシグナル伝達を誘導するが(Peifer. Science, 1997)、我々は臨床検体により癌組織特異的に発現する新規WntレセプターFzE3遺伝子をクローニングし、その高発現により癌抑制遺伝子APCが抑制されbeta-cateninの核内移行が促進することを証明した(Tanaka et al. Proc Natl Acad Sci USA, 1998)。最アフリカツメガエルのcolipase型分子Dickkopf(Dkk)がWnt/Fzシグナル伝達を抑制していることが報告されたが(Glinka et al. Nature, 1998)、本研究ではWnt/Fzシグナル解析のため、Dkkのヒト相同遺伝子群の新たなクローニングを進め、3つの新規遺伝子を同定しhDkk2,hDkk-3,hDkk-XとしてGenBank登録した(AB33208, AB33421,AB033941)。Wnt抑制分子にはWnt結合ドメインとの相同性を持つアンタゴニストFrp, Cerberus, WIFなどが報告されているが(Moon et al. Cell, 1997, Piccolo et al. Nature, 1999, Hsieh et al. Nature, 1999)、DkkはWnt結合ドメインとの相同性を認めないため全く異なった機序でWnt/Fzシグナルを抑制していることが示唆された。さらに本研究において、培養細胞へのWnt-2遺伝子導入により細胞内蛋白DvlとFRAT1の結合が阻害され、DvlとAxinの結合が促進することを見出した(投稿準備中)。またWnt-2によるこの結合変換はhDkk-1により抑制されるがhDkk-2では抑制されないという結果を得、現在その解析を進めている。本研究によりWnt/Fzシグナル伝達の制御メカニズムが明らかとする重要な成果が得られた。
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