研究概要 |
骨髄系前駆細胞株32Dは、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)添加により細胞周期停止ならびにそれに引き続く成熟顆粒球への分化が誘導される。このG-CSF依存的な顆粒球分化は、pRBファミリー(pRB,p107,p130)の機能を不活化するアデノウイルスE1A癌タンパクを発現することにより完全に阻止され、骨髄系細胞分化におけるpRBファミリーの機能的重要性が示唆された。そこで、テトラサイクリンならびにIPTGの二重制御を受ける発現プロモーター用い、32D細胞にpRBファミリー分子を誘導発現する系を樹立した。この系を用いpRBファミリーの一つp130を異所性発現させたところ、細胞増殖が抑制されるとともに核の分葉化で特徴付けられる成熟顆粒球への分化が誘導された。一方、異所性のpRB発現では分化誘導は認められない。次に人工改変分子を用い分化にかかわるp130責任領域を検討した結果、サイクリン―CDK結合領域として知られるスペーサー領域ならびにE2F結合に関与するポケット領域が分化誘導活性に必要不可欠であることが明らかとなった。さらに、細胞分化におけるE2Fの関与を明らかにするため、優性陰性型DP-1を32D細胞内に異所性発現させたところ、細胞増殖は強く抑制される一方、形態学的な細胞分化は誘導されなかった。以上の結果から、細胞分化プログラムの起動にはE2F活性抑制による細胞増殖停止に加え、p130により機能抑制される骨髄系細胞分化制御因子の関与が示唆された。 本研究を通して、pRBファミリー癌抑制蛋白が細胞の増殖と分化を協調的に制御するコーディネーターとして機能することが示された。pRBファミリー分子が細胞周期進行の抑制ならびに分化プログラムの促進という二面的機能を担うことにより、増殖と分化の二律排他性が保証されるものと推察される。
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