研究概要 |
第9染色体短腕(9p)の欠失は早期肺がんでは稀であるが、進行肺がんでは60%以上の頻度で検出される。また、第7染色体長腕(7q)の欠失は進行した乳がんや卵巣がん、2次性の急性骨髄性白血病などで高頻度に検出される。従って、これらの染色体欠失領域にはがんの悪性度を規定するがん制御遺伝子が存在すると考えられており、それらの遺伝子を同定すれば、ヒトがん悪性化のメカニズムの解明につながり、また、がんの悪性度を診断する予後マーカーとしてのがんの遺伝子診断への利用や遺伝子治療への応用も可能となる。本研究では、第7染色体長腕7q31、第9染色体短腕9p21領域について解析し、以下の諸点を明らかにした。 1.7q31領域に存在する蛋白質脱リン酸化酵素遺伝子PPP1R3[Protein Phosphatase 1(PP1),調節サブユニット3]が、肺がん等いくつかのがんでナンセンス及びミスセンス異変を生じていることを見い出し、PPP1R3が候補がん抑制遺伝子であることを明かにした。 2.9q21領域にはp16遺伝子座とは独立のホモ欠失(両相同染色体完全欠失)の標的領域が存在することを明らかにし、9p21領域に未知のがん抑制遺伝子が存在する可能性を示した。また、D9S171座付近に大きさ17,036bpの欠失・挿入型の多型が存在することを明かにした。
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