研究概要 |
新しいシスプラチン耐性因子を同定するために,遺伝子ライブラリー中からシスプラチン耐性に関与する遺伝子の同定を試みた。まず,2μm系ハイコピープラスミドYEp13をベクターとする酵母ゲノムDNAライブラリーを酢酸リチウム法により親株(W303B)に導入し,導入遺伝子を高発現する形質転換体(約2.4×104個)を得た。次に,この形質転換体を親株が成育できない濃度のシスプラチンを含む寒天培地で培養し,本条件下で生育してきた酵母クローン中のプラスミドについて解析を行った。その結果,高発現することによって酵母にシスプラチン耐性を与える遺伝子としてCRP1およびCRP2を見いだすことに成功した。両遺伝子は,出芽酵母ゲノム中に存在するORFの中で互いに最も相同性の高い遺伝子であり,これらの遺伝子のコードする蛋白質中には塩基性領域ロイシンジッパー(bZIP)モチーフが存在する。両遺伝子は,出芽酵母の多剤耐性に関与する転写因子として同定されているYAP1に対しても比較的高い相同性を有することから,CRP1,CRP2およびYAPlを高発現する酵母のシスプラチン以外の薬毒物に対する交叉耐性を調べたところ,CRP1およびCRP2導入酵母はメタンスルホン酸メチルおよびマイトマイシンCに対しても交叉耐性を示したが,YAP1導入酵母が耐性を示す過酸化水素およびカドミウムに対しては耐性を示さなかった。また、YAP1導入酵母はCRPlおよびCRP2導入酵母が耐性を示すシスプラチンおよびマイトマイシンCに対して耐性を示さず,CRPlおよびCRP2が共にYAP1とは異なる機構で薬剤耐性に関与している可能性が示唆された。
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